招待作家、福田恵(美術家/ドイツ)の作品紹介です。
日本家屋を舞台に、地域の各家庭で不要になった照明器具とソーラーパネルを用いて制作されたインスタレーション作品。
日本家屋を舞台に、地域の各家庭で不要になった照明器具とソーラーパネルを用いて制作されたインスタレーション作品。
吊るされた照明器具達は音符のように不規則な高さで空間を埋め、時にほの明るい光を灯し、日本家屋と照明器具の持つ記憶の断片をささやき合っているかのような異空を作りだしています。

また、それはソーラーパネルによる不規則な光源を体感する空間でもあります。
太陽光で作られる電力は、自然のサイクルに左右される不安定なもの。その不安定な光の動きを体感することは、自然の摂理を体感することともリンクします。
安定することのない太陽から得た光は、ともすれば有機的な動きにも見えるでしょう。
安定することのない太陽から得た光は、ともすれば有機的な動きにも見えるでしょう。
設営中の福田恵さん。高いところでもサクサク作業中。物作る人ってすごいなあ。
3.11をきっかけに供給されるエネルギーに意識が向かうようになった恵さん。
「壁の向こう側」から供給されている「電力」を視覚化し、それを作品の一部にしてきました。
「壁の向こう側」から供給されている「電力」を視覚化し、それを作品の一部にしてきました。
太陽光だと、夜になれば止まるし、晴れたり曇ったりでも光が不安定になる。
人間や自然の摂理と同じように不規則な電力を体感することで過剰なエネルギーは本当に必要なのかを考えることになれば、と言われます。
そして、ここに集められた照明器具達は、LED照明の登場により世代交代の転換期にいたモノ達でもあります。
消耗しきれずに廃棄される照明器具達が放つ、ほの赤い灯り達。
そして、ここに集められた照明器具達は、LED照明の登場により世代交代の転換期にいたモノ達でもあります。
消耗しきれずに廃棄される照明器具達が放つ、ほの赤い灯り達。
「モノ」以上の存在感を吹き込まれ、居場所を再び得ることを、照明器具達はどう思っているんだろうか、そんな事を設営の時から感じてしまいました。
また、この設営のお手伝いをしていた時の事、たまたま、展示会場になっている日本家屋の元家主さんが通りかかりました。
「(住み心地は)どげんね?ここ陽がささんやろ。だけん(この家を)手放したと。」立ち話の中にそんな一言がありました。
そう、この展示会場である日本家屋もまた、地域の人が「不要」になったものだったのです。
オープニング当日、展示会場になっている日本家屋の前で来場者に挨拶する恵さん。
ここで恵さんの過去の作品のひとつに、強く魅かれたものがありましたのでご紹介します。
「永遠の庭」というシリーズの第一作目「永遠の庭 ヒロシマ、祖父母の肖像」(2003-2004/広島)
「永遠の庭」というシリーズの第一作目「永遠の庭 ヒロシマ、祖父母の肖像」(2003-2004/広島)
既に亡くなっていた彼女の祖父の記憶を表現した作品です。
以下、作品への恵さんからのメッセージです。
「永遠の庭シリーズの第一作となる「永遠の庭 ヒロシマ、祖父母の肖像」(2003-2004/広島)では、荒れ果てていた祖父母の庭を舞台に、造花によるインスタレーション及び写真作品を制作しました。」
永遠の庭シリーズ、第一作「永遠の庭 ヒロシマ、祖父母の肖像」(2003-2004/広島)


「祖父は、農業改良普及に関わる技手さんという広島県の職員でした。
彼は、原爆投下直後に広島入りし被爆しました。
戦中戦後の食料不足を解消する為、農産物増産の改良指導者として尽力しながら、家族と暮らす家には手入れの行き届いた美しい庭を残し、1994年に亡くなりました。」
「私は、2003年の春から翌年の春まで、主を亡くして荒廃していたその庭に、永遠に咲きほこる造花を移ろわない記憶の象徴として植えたままにしておき、1年間に渡って百十数枚に及ぶ写真撮影を行いました。
展示ではその中から春夏秋冬の1枚ずつ4枚を選び、仏間の四方にぐるりと配置し、遺影に代わる写真作品としました。」
永遠の庭シリーズ、第一作「永遠の庭 ヒロシマ、祖父母の肖像」(2003-2004/広島)

「その写真が見下ろす部屋の中心部には、かつて祖父の遺体がありました。」
「1年の役目を終えて、造花は劣化し、茎部は錆びて痛んでいました。
その部分を包帯で治療するように、祖父母の衣服で包みました。
造花は身体性を持ち、体や魂の象徴としてそこに横たえました。」
参考サイト→福田恵HPより
主を亡くした日本家屋、永遠に咲き誇るはずの造花、祖父母の衣服と恵さんの手で造花は造花以外の、新たなる身体性を与えられる。
そんな作品と今回の展示が、幾重にもリンクするのは偶然では無い気がします。
そして図らずも、玄海原発から30キロ圏内の福岡県糸島市、ここに「福田恵の作品」があることにも大きな意味を感じます。
作品を通じてソーラーパネルの仕組みを体感する子ども達。

余談ですが、ご家族で展示を見た万野幸美さん(コンセプトマップ、イラスト担当)は、
恵さんが太陽パネルを隠すと一気に照明が暗くなり、とてもビックリしました。子ども達も最初は訳がわからない様子でしたが、照明が暗くなった原理を理解すると俄然、興味をもってました。
との感想を伺いました。ご家族、ご友人、大切な時間を共有してきた人達と、この機会にぜひともこの作品を体感して欲しいですね。(おひとりでももちろん大歓迎ですよ!)
※天候に左右される作品です。陽のあるうちの来場をオススメします。
■作品参考記事「過去を形にするアーティスト、福田恵(ドイツ・美術家)」
福田恵(Fukuda, Megumi/ふくだめぐみ)美術家
1976年広島生まれ、ベルリン在住。2001年広島市立大学大学院芸術学研究科を修了後、2004-2008年ベルリン芸術大学にてレベッカ・ホルンに師事。空き地を巡る庭プロジェクトや、不要となった様々な日用電化製品を太陽光で稼働させるインスタレーション作品を手がけている。
HP/http://www.megumifukuda.com/